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    日本経済


    日本円の紙くず化が避けられない理由とは?


    (えん)は、日本国の法定通貨の通貨単位。通貨記号は¥(記号)、ISO 4217による通貨コードはJPY。旧字体では圓、ローマ字ではyenと表記され、しばしば日本円(にほんえん、にっぽんえん)ともいう。 通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(昭和62年法律第42号)により「通貨の額面価格の単位…
    47キロバイト (4,515 語) - 2024年3月27日 (水) 08:09


    日本円の価値が下がるのはやはり何かしらの影響があるんでしょうね。今後の経済政策がどうなるか気になります。

    日本銀行は3月18日、19日の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除を決めた。日本経済はこれからどうなるのか。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史さんは「マスコミなどは『大規模緩和からの転換』と大騒ぎしているが、実質は何も変わっていない。日本円の暴落、紙くず化はやはり避けられない」という――。

    ■日銀は本当に「大規模緩和の転換」をしたのか

    私は1月19日に参議院議員に繰り上げ当選し、2期目に返り咲かせていただいた。そこで最初に明確にしておきたい。本稿は私の個人的見解、予測であり、所属する党の公式見解ではない。

    そもそも金融論はイデオロギーや政治的な主義主張とは無縁である。日本人を幸せにする正しい政策か、間違った政策かに尽きる。本稿では日本銀行(以下「日銀」)の財務内容がいかに悪化しているかを書くが、そのような分析は政治理念によって変わるものではない。事実は事実だからだ。

    本稿は、マーケットの最前線に於いて長年、切った、張った、で戦い、実績を上げてきた自他ともに認める現場人間の分析、予測だ。そのつもりでお読みいただきたい。

    3月18日、19日に開かれた日銀の政策決定会合で、日銀はマイナス金利政策の解除を決めた。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)や上場投資信託(ETF)などリスク資産の買い入れを終了することも決めた。これにマスコミは「大規模緩和からの転換」「正常化への第1歩」と大きく報じ、大騒ぎとなった。

    にもかかわらず市場への影響はほとんどなかった。むしろ為替は、多くの識者が予想した円高ではなく、逆に円安が進行して再び1ドル150円を超えた。長期金利の水準は大きく変わらなかった。

    ■「異次元緩和をさらに推し進める」ことが示された

    この「なぜか?」を事後的に滔々(とうとう)と分析しているコメンテーターもいるが、分析するまでもなく、理由は簡単だ。

    「マイナス金利政策」を解除したところで市場金利はほとんど変わらず、日銀は「YCC解除」という言葉で変化を印象付けようとしたのだろう。しかし実際は「異次元緩和をさらに推し進める」ことを確認したに過ぎない。そのことをマーケットに見透かされたからだ。金融環境が何も変わらなかったのだからマーケットが反応するわけがない。

    さらには、インフレが進行しても日銀にはもう打つ手がなくなったことも印象付けてしまった。今回の金融政策決定会合で打った政策変更は豆鉄砲だった。今後は、決定会合のたびに日銀のインフレに対する無力さが明らかになっていくだろう。化けの皮が1枚ずつ剝がされていくと思う。

    ■株と国債の爆買いは「禁じ手」

    「今、日銀は政策変更をすべきなのか?」と聞かれれば、答えは当然にYESだ。

    日銀は、大規模緩和を続けるにあたって「禁じ手」を使ってきた。金融政策目的で株を保有している中央銀行は日銀以外、G20の国にはない。日銀はETFを大量に爆買いし続け、日本最大の「株主」になってしまった。

    その保有額は、長期債の購入(=お金のバラマキ)に比べれば桁違いに小さい金額なので、異次元緩和政策にはさほど影響がなく、やめても(株式市場に影響が出たとしても)日銀自身が窮地に追い込まれることはない。はるか以前に止めるべきだった。せっかく進めてきた国の民営化と真逆の逆民営化政策だった。日本は社会主義国家ではないはずだ。

    長期債も同様で、日銀ほど(対GDP比)長期国債を保有しているG20の国はない。私が金融マンだった頃の日銀は、長期債などほとんど保有していなかった。他国の中銀は「まだ日銀がこけてないから」との理由で日銀を「炭鉱のカナリア」として、日銀のはるか後方をおそるおそるついてきただけだ。

    その他国の中銀は、すでにUターン(=国債保有の増額中止、減額)を始めている。日銀だけが崖に向かって驀進中だ。インフレを抑制し、金融正常化を実現するには、日銀は保有する長期国債も大幅に減じるべきなのだ。

    中央銀行は、株や国債などの価格が大きく変動する金融商品を保有すべきではない。市場をゆがめるだけではない。債務超過に陥ってしまうと信用が失墜し、その発行する通貨の価値も失墜してしまうからだ。これは伝統的金融論の肝である。

    ■物価高を抑えるために「大規模緩和の終了」は不可欠

    東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)は2022年10月から前年同月比2.0%を超え、高い時は4%に達した。現在でも3.15%(2月)の高い水準にある。

    今後、政府のエネルギー補助金が打ち切りとなれば、物価高に対する国民の肌感覚は、さらに悪化するだろう。為替が円安方向に進めば、インフレ加速のリスクはさらに高まる。

    このような経済環境の中で、市場金利の原点(日銀の誘導目標)であるオーバーナイト無担保コールO/N物レートがゼロ%という史上最低レベルのままでいいはずがない。少なくともCPIと同じ2%以上であるべきだ。長期金利も「名目長期金利=実質金利+期待インフレ率+政府の倒産確率」という伝統的金融論が唱える数式に当てはめれば現状の金利0.7%はあまりに低すぎる。

    長短金利があるべき姿から長期にわたって乖離(かいり)すると、インフレが加速し中央銀行の制御が効かなくなる。市場金利が政策金利を無視して荒れ狂うことになる。そうなると日本経済はめちゃくちゃだ。

    以上を考えると日銀は金融政策を少なくとも中立程度にまで修正していかねばならないのは明らかだ。異次元緩和を継続するべき地合いではない。

    しかし「するべき」と「できる」とは全く違う。日銀の植田和男総裁も「政策変更は絶対必要」と思っているはずだ。問題はそれができないことだ。日銀の債務超過を筆頭として、日本経済のダメージがあまりに大きすぎるからだ。そこが日銀、そして日本経済の大問題なのである。

    ■日銀は何も変えていない

    黒田東彦・前日銀総裁が始めた「異次元緩和」は、正式には「量的・質的金融緩和」という。質的とは、日銀が長期国債などの購入に踏み込むことであり、量的とは日銀が大量の長期国債を購入して、お金を銀行間市場に流し込む政策だ。これが今の日銀の金融政策の根幹である。

    YCCやマイナス金利政策はその太い幹から出た枝、あるいは棘(とげ)のようなものにすぎない。したがって「日銀の政策変更」が行われたか否かは、長期国債の大量購入を止め、保有国債の減額にかじを切ったか否かで判断するべきだ。

    すなわち「年間の購入国債<償還国債」が実現して初めて「量的緩和政策の変更」と言える。

    今回の金融政策決定会合で、日銀は長期国債を毎月6兆円程度買い入れることを決めている。私が参院予算委員会で日銀に聞いたところ、今年満期を迎える日銀の保有国債は67.1兆円になる。買い入れ額のほうが償還額より多いのだから、日銀の保有国債額は相変わらず増え続ける。これでは「量的緩和政策の変更」などとは到底言えない。

    3月22日の日経新聞1面トップに「世界緩和マネー、圧縮途上 ピークの8割」という見出しが掲げられた。“途上”ではあっても各国中銀はバランスシート(BS)を圧縮している。つまり市中に出回ったお金を回収しているのだ。

    一方の日銀はBSを拡大し、円をばらまいていく。モノやサービスと同じで、お金も供給過多になれば価値は下落する。円安、インフレが予想される。なお、下落する円とは逆にビットコインが昨今爆謄しているのは、ばらまかれ続ける円と発行量に上限があるビットコインとの希少価値の差にあるように思える。

    ■「マイナス金利の解除」は「利上げ」ではない

    政策金利とは市場金利を誘導させるための金利である。政策金利が重要なのではなく動かすターゲットの市場金利が重要だ。

    なぜならば、貸出し金利、預金金利、住宅ローンの変動金利、FXのスワップポイント、日米金利差等は市場金利で決まるのであり、政策金利で決まるわけではないからだ。

    FRB(米連邦準備制度理事会)の政策金利や、異次元緩和前の日銀の政策金利は、100%市場金利と連動していたから政策金利の動きをウオッチしていればよかった。しかし、異次元緩和後、日銀は補完当座預金制度適用利率という510兆円(2月16日から3月15日)のうちの、たった28兆円にしか適用されないペナルティー金利のことを政策金利と称するようになった。私は何じゃそれ? と思っていた。市場金利との100%の連動性がないからだ。

    実際、政策金利がマイナス0.1%だった金融政策決定会合前日の無担保コールO/N物レート(市場金利の原点)はマイナス0.003%だった。ほぼゼロ%と言ってもよい。もし今回の決定会合が「マイナス金利政策の解除」だけだったら、無担保コールO/N物レートはマイナス0.003%から0%に変わっていただけであろう。

    政策金利を0.1%上げたのに、市場金利はたったの0.003%しか上がらなかった。微動だにしなかったと言ってもいい。

    ■0.077%の上昇…これを利上げというのは恥ずかしい

    「マイナス金利解除」と大騒ぎして、市場金利はたったの0.003%の上昇。これではまずいと思ったのか、日銀はマイナス金利政策の解除だけではなく、政策金利をマイナス0.1%からプラス0.1%へと変更するゼロ金利政策の解除も同時に行った。

    したがって決定会合翌日の無担保コールO/N物レートはプラス0.074%まで上昇した。しかしながら政策金利をマイナス0.1からプラス0.1%へと0.2%上昇させたのに、(市中金利の根幹である)無担保コールO/N物レートは決定会合前日のマイナス0.003%からプラス0.074%へとたった0.077%しか上昇していないのだ。

    欧米では0.25%とか0.5%の上昇を利上げというのに、0.077%しか上昇していない。これを利上げと称するのは、恥ずかしい。

    「これでは利上げとは言わないのではないか?」と私が参院財政金融委員会でお聞きしたら、植田総裁は「利上げは利上げですから」と答弁された。ならば私はこれから68kgの体重が67.9kgへと減量しことを、「ダイエットに成功した」と言うことにする。「減量は減量」なので。

    利上げと大騒ぎしても実際は利上げでもなんでもない。だから為替が円高に触れなくても当たり前なのだ。

    21日の参院財政金融委員会で、植田総裁は住宅ローン金利について「大幅に上昇するとはみていない」との見解を述べられたそうだ。当たり前だ。市場金利の根幹が0.077%しか動いていないのだから住宅ローン金利が大幅に上昇するわけがない。

    ■日銀の印象操作に、アナリストやマスコミが大騒ぎしただけ

    預金金利についてはどうか。19日の日経新聞「三菱UFJと三井住友、普通預金の金利を0.001%→0.02%に」には、両者が普通預金金利を現在の20倍に引き上がると書いてあった。しかし実態は0.001%が0.02%になっただけであり、0.019%上げるだけに過ぎない。

    100万円を預金して年間10円となる受取金利が200円に上昇するだけで、蟻の涙が雀の涙に変わっただけだ。政策金利が0.2%上昇したのに、預金金利は10分の1程度の0.019%の上昇しかしない。無担保コールO/N物レート上昇幅の0.077%ほども動いていない。

    これがアナリストやマスコミが大騒ぎした「マイナス金利政策の解除」の結果である。「マイナス金利政策解除」を「利上げだ」「日米金利差縮小だ」と大騒ぎしていた識者やアナリストは、あまりにみっともないと思う。YCCの解除といい、何ら実態のない言葉の遊びにすぎなかった。

    なお私が前項の件に関し参議院財政金融委員会で質問したら、植田総裁は「政策金利」の定義を微妙に変えた」とお答えになった。今後は昔同様O/N 無担保コールレートそのものを政策金利と呼ぶようになるようだ。「何じゃ、それ?」だ。

    日銀の都合のいいように定義を変えるのか?(筆者注:補完当座預金制度適用利率を政策金利としたのは円安誘導のために日銀がアグレッシブに金利を下げているとの印象を世界にふりまくための印象操作だったと私は思っている)「いずれ、銀行がフジマキに貸し出す金利を政策金利と呼ぶようになるのではないでしょうね」と嫌味を言っておいた。

    打つ手の無くなった日銀は、印象操作という技巧に頼らざるを得ないほど追いやられていると私は思っている。

    ■日銀が利上げをしたくても「できない」理由

    インフレが加速していった場合、プラスに戻った市中金利を更に上げていくためには、日銀当座預金に対する付利金利を上げていくしか方法はない。他国の中央銀行もその方法で利上げをしている。伝統的金融政策をしていたころの利上げ手法は、異次元緩和をしてしまった以上、日銀は使えない。

    現在、日銀当座預金残高は538兆円だから、法定準備金を除けば約500兆円。今後は0.1%の利上げごとに年間5000億円の金利支払いが生じる。

    令和4年度(2022年度)の日銀の経常利益は3兆2307億円。そのうちETFからの利益が1兆1044億円、外国為替関係益が7490億円だ。前述したように、本来中央銀行が保有してはいけない株で純利益の3分の1を上げているなど、びっくり仰天だ。

    それはともかく、本来、中央銀行の通貨発行益の主たる源泉は保有国債からの受取利息だが、日銀の受け取り利息は1兆5207億円に過ぎない。0.1%ごとに5000億円の支払い金利が発生すれば、いとも簡単に損の垂れ流しが始まる。

    ■「利上げのできない中央銀行」にインフレ抑制は不可能

    膨大な国債を抱える日銀にとって、利上げが自分の首を絞めることになる。利上げできない以上、インフレに対抗する武器を日銀はすでに失ったと言える。インフレ対応能力を失った中央銀行など中央銀行とは呼べない、日銀はもはや政府の紙幣印刷所に過ぎない。

    ちなみにFRBの受け取り利息は年間26兆円ほどである。日銀の1兆5207億とは次元が違う。だからFRBはFED FUNDレートを5.25%から5.5%まで引き上げてやっと損の垂れ流しが始まったのだ。

    日銀が無担保コールO/N物レートを5.5%まで引き上げたら毎年27兆円の損の垂れ流し(これは予算委員会で日銀に聞いた)となる。一般会計税収約70兆円と対比してみればとんでもない数字であることが分かる。ちなみに私が銀行員時代には無担保コールO/N物レートの5.5%など異常なレートでも何でもない。1985年の平均は9.06%、89年6.65%、90年8.34%だ。

    このままインフレが加速していったら日銀の損の垂れ流しは他の中央銀行の比ではない。日銀に自らの信用、日本円の信用を保てる自信はあるのだろうか? FRBは大丈夫だから日銀も大丈夫という話ではない。

    現在の日本国債10年物の金利は0.73%。私が参院予算委員会で日銀にお聞きしたところ、日銀の保有国債の評価損は10兆円(2023年9月末時点、10年物金利は0.76%だった)、金利がパラレルシフトすると、1%の金利上昇で評価損は29兆円程度増加するそうだ。

    長期金利が1.76%まで上昇すれば39兆円の評価損になるということだ。「日銀は償却原価法を取っているから表差損は問題ない」というのが黒田前総裁、植田総裁の答えだか果たして、そうか? 私は全くそう思わないが字数の関係で今回は触れない。

    ■日銀は追い詰められている

    長期金利が上昇すればとんでもない評価損が発生し、短期金利を上げていけばとんでもない損の垂れ流しが始まる。日銀は追いつめられている。

    異次元緩和を開始してから、日銀財務の脆弱(ぜいじゃく)性は日に日に悪化している。改善したり悪くなったりを繰り返しているのなら、まだいい。しかし、一時期たりとも改善したことはなく、解決策を誰も見出していない。

    次期総裁選びの際、垂涎の的の総裁職を日銀マン、日銀OBは誰も引き受けなかった。財務省OBの最高の天下り先だった総裁職を、財務省OBも誰も引き受けなかった。内部事情を知れば知るほど尻込みをしてしまったのは当然だ。

    なのに植田氏は総裁職を引き受けた。日本金融学会での講演録や、日銀審議委員時代の議事録を読むと、植田氏は明らかに私と同様、日銀の政策に相当の危機感をお持ちだった。日銀審議委員時代は、いわば日銀の党内野党の立場のように思われる。

    それが総裁になった途端に、楽観論者に変わったのは「そう言わざるを得ない立場」になったからだろう。それは理解する。私が思うに、植田氏が総裁を引き受けられたのは、市場の動きを甘く見ていたせいだ。

    机上の学問通りには事は運ばない。そして植田総裁の最大の問題は総裁職を引き受けたことだと思っている。もし、見識ある人たちが誰も引き受けなければ、その時点で日銀が大問題を抱えていることを日本中が認識し、その解決に英知を傾け(と言っても時すでに遅し、だとは思っているが)、国民は自らが資産防衛に走らねばならないことを認識したはずだ。危機の発生を更に先延ばしにして、起こりうる市場の暴力を極大化してしまった。

    ■固定金利の高さは保険料と考えるべきだ

    私は本稿で「日銀はインフレが加速しても、もう武器を持っていない」と書いた。それを読んで「短期政策金利を引き上げられないのなら住宅ローンは変動型のままでいいか」と思わないでいただきたい。

    本稿で述べた通り、(異次元緩和時期を除いて)政策金利とは市場金利を誘導するためのものだし、実際ワークしていた。しかしながら中央銀行が信用を失えば、市場金利は政策金利を無視し、暴走する。インフレが加速すればいくら日銀が政策金利を低位に抑えていても、市場金利は高騰し、住宅ローンの変動金利も上昇してしまうだろう。

    私はその事態を危惧する。変動金利から固定金利への変更は事務手数料程度でできる。現在は固定金利のほうが変動金利よりだいぶ高いかもしれないが、高い分は保険料と考えるべきだと思う。

    ■円高要因は“為替介入”ぐらいしかない

    為替は「国力を反映する」のが大原則だ。国力の弱い国から強い国にお金は流れる。景気がいい国は金利も高く、株価も上昇する。投資対象物がいくらでもあるからだ。その観点からすると40年間、世界ダントツのビリ成長を続けてきた日本の通貨・円が弱くなっていくのは当然だ。

    しかし、それは平時の話で、中央銀行の信用が前提となる。世界ダントツのビリ成長を続ける日本の中央銀行の財務が、これまた世界最悪ときているのだから円の価値毀損(きそん)は不可避だと思っている。

    加えて本稿に書いた通り、他国の中央銀行はばらまかれたお金の回収を始めているのに対し、日銀はバラマキ続けているのだ。円がトレンドとして強くなる要因はほとんど見当たらない。日米金利差などという枝葉の理由だけの円安ではない。

    そうなると、ほんの一時的とは言え、円高要因は政府による為替介入くらいしかない。そこで為替介入が効くかどうかの私見を最後に述べておきたい。

    資本主義社会では為替介入はルール違反である。それゆえ市場では、ダーティーフロートとか、近隣窮乏化政策というネガティブな言葉で表現されている。さらに、他国に不利益をもたらす恐れがあるから自国の都合だけでは行えない。

    米国は今年選挙の年だ。インフレ再燃は政権にとって最も回避したい経済事象だ。インフレが再燃すればバイデン大統領の再選は困難になろう。ドル安(=円高)は米国の強いインフレ要因だ。したがって、米国はそう簡単にはドル売り介入を許可しないと思われる。円安加速防止ならまだしも、ドルの押し下げ介入など許すはずがない。2年前とは事情が違う。

    ■避けられない「X デイ」の先に日本の大復活がある

    こう考えると、従来から主張している通り、日本円が大暴落するX デイは不可避だと思う。ドル資産を買って保険とし、苦しい時期を乗り越える準備が不可避だ。

    しかし日本人は頭もよく、礼儀正しく、勤勉な国民だ。厳しい時代に、社会主義体制を真の資本主義体制に改革できるならば必ずや日本は大回復する。将来を悲観することは無い。

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    藤巻 健史(ふじまき・たけし)
    フジマキ・ジャパン代表取締役
    1950年東京生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。80年に行費留学にてMBAを取得(米ノースウエスタン大学大学院・ケロッグスクール)。85年米モルガン銀行入行。当時、東京市場唯一の外銀日本人支店長に就任。2000年に同行退行後。1999年より2012年まで一橋大学経済学部で、02年より09年まで早稲田大学大学院商学研究科で非常勤講師。日本金融学会所属。現在(株)フジマキ・ジャパン代表取締役。東洋学園大学理事。2013年から19年までは参議院議員を務めた。2020年11月、旭日中受賞受章。

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    金融政策決定会合を終え、記者会見する日本銀行の植田和男総裁=2024年3月19日、東京・日本橋本石町の同本店 - 写真=時事通信フォト


    (出典 news.nicovideo.jp)

    【日本円の紙くず化が避けられない理由とは?】の続きを読む


    日銀総裁の植田氏が仕掛けたYCC再修正、果たしてその結末は?


    YCC YCC ヨコハマ創造都市センター - 神奈川県横浜市に存在するクリエイティブ活動・創造都市拠点 横浜商科大学 - 神奈川県横浜市に存在する学校 ワイ・シー・シー - 山梨県甲府市に存在する情報処理関連企業 山口電子計算センター - 山口県山口市に存在する情報処理関連企業 YCC情報システム…
    821バイト (179 語) - 2022年6月16日 (木) 01:00


    この政策の結果がどうなるか不安ですね。日本円の価値がますます下がる可能性があるので、早く何か対策を打たないといけないと思います。

    2023年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。国際・政治経済部門の第5位は――。(初公開日:2023年11月10日)
    日本経済はこれからどうなるのか。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史さんは「日銀は10月の金融政策決定会合で、『2度目のYCC再修正』を決定した。長期金利は1%に迫っており、現状を追認しただけだ。日銀は異次元緩和というバラマキを続けざるを得ず、円の紙くず化はもう近い」という――。

    ■日銀が「長期金利1%超え」を容認した

    日銀は10月30日、31日の金融政策決定会合で、YCC(イールド・カーブ・コントロール、長短金利操作)の再修正が決定した。長期金利1%を事実上の上限としていたが、1%を超える金利上昇を一定程度容認する。金融緩和の継続を堅持することも決めた。

    日銀は10年国債金利の許容変動幅を±0.1%、±0.2%、±0.25%、±0.5%と順次引き上げ、7月末には「±0.5%目途」とする柔軟化を決定。1%での連続指値オペを行うと表明したことから、1%が「事実上の上限」となっていた。物価上昇への対応のようではあるが、本質的には日銀の組織防衛戦であり、戦線は後退を続けている。最終防衛ラインも突破された危険な状態に入った。

    日本でも物価上昇が続いている。9月の全国消費者物価指数は、前年同月比(生鮮食品を除く)が2.8%。ガソリンなどの補助金で物価を低く抑えての2.8%である。この結果、日銀が目標としている2%を19カ月間連続で上回った。

    それにもかかわらず、日銀は「まだ物価上昇が確実でない」と主張し、物価上昇を促す金融緩和政策をとっている。筆者が思うに、日銀は「緩和を堅持しているどころか加速させている」と言っていい。正確に表現するなら“緩和継続”ではなく、“緩和加速”である。

    ■行き着く先は「円の紙くず化」…開業以来、最大の危機

    そう書いたのは、長期金利の更なる上昇を抑えるために、債券市場から国債を大量に購入する「国債買いオペ」を強化しているからだ。国債買いオペとは、お金を市中銀行に振り込むことでもある。市中にあるお金の量を増加させる(=日銀バランスシートを膨らませる)のだから量的緩和の拡大なのだ。市中にあるお金の量を一定量に保つ「量的緩和の維持」にとどまらない。

    市中にあるお金を吸収している欧米の中央銀行とは真逆の行動である。お金がバラマキ続けられれば、その価値はますます希薄化(=円安、インフレ加速)していく。

    政府が物価対策としてガソリンなどへの補助金を出し、所得減税まで予定しているにもかかわらず日銀は、真逆の政策をとっている。普通の消費者感覚からすれば理解不能のはずだ。

    もうロジカルな思考経路を持つ人なら気がついてもいいはずだ。

    日銀は金融緩和を止めたくてもできないのだ。解除したらとんでもない事態が待っていることを頭のいい植田和男日銀総裁は、十二分に理解されている。だからこそ無理やり「緩和を継続する方便」を見つけ出し、緩和を継続(加速)させることに汲々としている。

    日銀は追い詰められている。明治15年の開業以来の最大の危機に直面している。それはとりもなおさず「円の紙くず化」の危機だ。

    ■「現状追認の微調整」しかできなかった理由

    10月末の政策決定会合前でも、今、日銀が政策変更するとしたら、①YCC再修正・放棄、または②マイナス金利政策の解除だろうと指摘されていた。

    マスコミ報道でもYCC再修正が予想されていたが、結局は「現状追認の微調整」に終わったと筆者は考えている。日銀はYCCの放棄はもちろん、この枠組みの変更はできない。

    それはなぜか。政策変更をすれば、さらなる長期金利上昇を日銀自身が招くことになるからだ。金融システムの大混乱し、日銀自身が死に体になる。

    長期国債の爆買で長期金利を低く抑えつけるYCCは、そもそも、オーソドックな金融論では中央銀行の禁じ手だ。「短期金利は中央銀行、長期金利はマーケットが決める」がオーソドックスな金融論の教えであり、世界の金融界の常識だ。したがって長期金利を政策目標にしている中央銀行は日銀以外、他には昔も今もない。

    かつて日銀自身が一般向けホームページ「教えて!にちぎん」にそう書いていた。しかし、異次元緩和に手を染め国債の爆買いを始めた結果、そのオペレーションとの整合性をとるためか「長期金利はコントロールできる」と変えたのだ。

    ■長期金利をコントロールできないことを証明した

    日銀が長期金利の政策金利をゼロ%としながらも、上限を0.25%、0.5%、1.0%に段階的に変え、今回は「1.0%を多少超えても可」とするに至った。市場の圧力に敗れ上振れさせてきたことは、「中央銀行が長期金利をコントロールすることなどやはり無理」の証明でもある。

    日銀が長期金利をあるレートに設定をすると、金利上昇の際、市場圧力の増加に対応するため、過度の国債買いオペ(お金のばらまき=量的緩和の加速)を迫られる。お金をばらまかないと、長期金利上昇を止められない。お金のバラマキは景気過熱、インフレ促進であり長期金利を抑えようとして、逆に市場の長期金利を押し上げてしまうのだ。

    長期金利の上限(あるいは上限目途)の度重なる引き上げは、日銀が市場の圧力に屈してきた結果である。いずれ日銀は長期金利のコントロール自体が不能となり、長期金利の市場金利は、虎を野に放つ勢いで暴騰すると私は思っている。

    なお、今までの中央銀行は(短期金利の話だが)政策金利を動かすことによって市場金利をコントロールしてきた。市場金利をコントロールできなくなった中央銀行は中央銀行の体(てい)をなさない。

    ■長期金利1%で日銀と日本の金融システムは崖っぷち

    今回の政策決定会合での微調整でさえ国債売りは優勢となり、長期金利(10年債金利)は一時上昇。11月1日には0.97%をつけた。10年5カ月ぶりの高水準だ。いよいよ金利1.0%に迫ってきた。

    長期金利が1.0%になると、日銀や日本の金融システムはどうなるのか。金利上昇は債券価格の下落を意味する。つまり様々な金融機関の保有債券評価額(評価損、いわゆる含み損)が拡大することになる。

    その額はどのくらいになるかを検討してみよう。参考になるのは2022年9月末(長期金利0.25%)と12月末(長期金利0.5%)時点の評価損の増加具合である。

    長期金利が0.25%上昇したことにより、地方銀行全体の債券評価損は2倍(1.6兆円)に増えた。生保主要15社は約5兆円5600億円の評価益が約3600億円の評価損となった。5.9兆円の評価額の減少だ。一方の日本銀行は、評価損が8849億円から8兆8000億円に拡大した。評価損が7.9兆円増えたのだ。

    長期金利が0.5%から1.0%に上昇した場合、大雑把に言えば、上記の評価損が2倍になる。地銀は評価損3.2兆円、生保主要15社の評価損は12.1兆円、日本銀行は24.6兆円の評価損となる。単純計算であり正確性は欠けるものの、巨額であることに変わりない。日本の2023年度の税収予想額70.3兆円と比べれば、尋常ならぬ額である。

    米国のように長期金利4%後半にもなれば、腰を抜かさんばかりの評価損になってしまう。日銀や金融機関はたちまち債務超過になる。

    ■金利が上がれば、どんどん債務超過になる

    債務超過になると何が怖いのか。時価会計ベースで「債務超過になる」とは資産、負債両サイドを現時点で現金化した場合、借金等の負債を全部返済するのには現金が不足するということ。民間銀行だと「取り付け騒ぎ」のリスクが生じる。

    預金者は、銀行が(資産を売却して)調達した現金が枯渇する前に、自分の預金を引き落とそうとするからだ。最近では米国のSVB(シリコンバレーバンク)での資金流出劇が記憶に新しい。

    債務超過が怖いのは、なにも銀行だけではない。企業でも債務超過になれば、同じ現象が起きる。お金を貸している銀行や関係企業、社債を買っている(=貸金をしている)人たちが、資金が枯渇する前に回収を図る。その結果、企業は資金繰倒産をしてしまう。

    よく「債券は満期になれば元本がきちんと返ってくるから問題ない」と主張する人がいるが、債権者は債券の満期までその企業からの資金回収を待ってくれない。リーマンその他多くの企業がこのケースで資金繰り倒産している。

    ■債務超過の中央銀行が、ひとたび信用を失うと…

    そして債務超過の最も恐ろしいのは、その企業の信用が著しく傷つくことだ。日銀であっても同様である。

    中央銀行の信用が傷つけば、発行する通貨の信用は失墜する。日銀自身が、このことを十分認識しているのは明らかだ。雨宮正佳・日銀副総裁(当時)は、日本金融学会の2018年度秋季大会で「マネーの将来」と題した特別講演を行い、こう発言した。

    「もちろん、中央銀行への信用がひとたび失われれば、ソブリン通貨といえども受け入れられなくなることは、ハイパーインフレの事例が示す通りです」

    要は、中央銀行への信用が失われれば、その発行する通貨の信用は失墜しハイパーインフレ(=通貨価値の大暴落)が起きるとおっしゃったのだ。中央銀行の信用失墜の最たるものの一つが債務超過だ。

    自国民ならともかく、外国人は債務超過の中央銀行が発行した通貨など信用しない。輸出しても、そんな通貨よりドルを所望する。貴重なドルを売ってまで、そんな中央銀行が発行する通貨など受け取らない。

    ■外資系銀行は日銀の財務状況を冷静に見ている

    私が1985年に邦銀からJPモルガンに転職した時に驚いたことがある。

    邦銀ではG7の政府や中央銀行に対しては取引枠はなかった。青天井で取引できた。国債の保有や中央銀行の当座預金に残高を置くことは、信用リスクの観点からは無制限にできたのだ。

    ところがJPモルガンではG7の国であれ中央銀行であれ、取引の上限枠が設定されていた。これにはかなりのカルチャーショックを受けた。米銀は倒産の可能性を考慮し、リスク管理をしている。取引枠があるということは、信用力が落ちたら枠を縮小し、さらには閉鎖することがあるということだ。

    特に、債務超過が一時的でなく、どんどん大きくなると思えば確実に閉鎖だろう。外資は日本人や日本政府のために日本に進出しているわけではない。株主の利益極大化のために行動している。株主の損失回避は経営陣の最重要な責務である。

    ■欧米銀行が日銀当座預金を閉鎖すると…

    一般の方は、日銀に預金ができないから日銀の口座にはなじみが薄い。しかし、日銀当座預金とは日本経済にとって極めて重要な口座だ。

    日本の経済的取引の最終決済は、この口座で完結する。たとえば、手形交換。約束手形は手形交換所で交換されるが、その裏の資金決済(各銀行の勝ち負けをネットアウトした金額の決済)は日銀当座預金口座を通じて行われる。国債取引、株取引、内国為替、外国為替、すべてそうだ。

    日銀当座預金を閉鎖した場合、日本国内でのあらゆる銀行業務はできなくなる。民間金融機関が日銀検査を異常に怖がる理由の一つである。日銀当座預金閉鎖は銀行業の廃業命令と同義である。

    米銀が日銀当座預金口座を閉鎖するとは日本での銀行業務から撤退することを意味する。さまざまな弊害があるが、特にドル/円の取引が不可能になるのが怖い。

    ドル/円のリンクがはずれれば、円はローカルカレンシー(地域通貨)化する。そんな通貨を世界は相手にしない。貿易でも、為替市場でも円は受け取ってくれない。円の大暴落だ。

    制裁のためにスイフト(国際金融取引の決済ネットワーク)から除外されたロシア・ルーブルと同じ状態になる。ロシアは産油国であるため、「ルーブルでなければ原油を売らない」と脅しかけルーブルの価値をある程度保つことができたが、円にそれは期待できない。

    ■「Xデイ」はいつなのか

    「Xデイはいつなのか。それが言えないのならフジマキの主張はいい加減である」とよく言われる。

    そのきっかけとなり得る一つが、米銀の日銀当座預金口座の閉鎖だと思っている。撤退の意思決定は米銀審査部のごく少数の幹部や経営陣が秘密裏に行うだろう。私には彼らがどう分析するかはわからない。彼らの頭の中までは見えない。

    日銀が純資産である限り、そのような決断はしないのではないか、と思っている。しかし日銀が債務超過になったら話は別である。日銀が債務超過に陥るのか、いまだ純資産であるかは、極めて重要なポイントなのだ。

    日銀もその点は十分わかっている。だからこそ1%を超える長期金利の上昇を絶対に許すわけにはいかないはずだ。黒田東彦・前総裁時代から、日銀はETF(上場投資信託)の爆買いを続けてきた。株式の含み益の額によって債務超過に陥るレベルは多少上下するだろうが、1%からそれほど離れているとは思えない。

    いずれにせよ、日銀が許容できる金利上限は、もう目と鼻の先なのだ。

    ■日本円の大暴落は一瞬で起きる

    経済評論家やマスコミは、物価上昇を抑えるために「YCCを撤廃するべきだ」と主張する。もちろん植田総裁は十二分にわかっている。

    しかしYCCを撤廃すれば、長期金利1%をはるかに超える。債務超過、円のローカルカレンシー化、すなわち大暴落の引き金をひいてしまう。そうなればハイパーインフレに一直線だ。日銀にYCC廃止などできるわけがないのだ。

    外資の日銀当座預金閉鎖は一晩で起こりうる。その時、日本円しか持っていない日本人はどうやって資産を守るのか。そんなリスクを背負うことを賢明だとは思わない。

    なお、金融論的には、「中央銀行が債務超過に陥っても大丈夫な条件」が3つある。

    ① 債務超過が一時的である。
    ② 金融システム救済のために債務超過になるが中央銀行自体のオペレーションは健全である。
    ③ 国家の財政が健全化に向かっており、近い将来、税収で、中央銀行の債務超過を補塡(ほてん)できる

    との3条件である。米銀の審査部はこの辺を考えながら、日銀当座預金を閉鎖するか否かの判断をすることになるだろう。現在の日銀は上の3条件、どれ一つ該当していない。

    ■マイナス金利政策解除では何も変わらない

    先月31日の政策決定会合の際には、YCCのほかに「マイナス金利政策の解除」が可能性として取りざたされていた。

    私は、これが日銀の取れる唯一のオペレーションであり、いつかはこれを行うと思っている。しかし、これは「金融緩和政策の変更もどき」であって実質的に何の意味もない。金融緩和の解除などとはお世辞にも言えない。

    情けないことに、多くのマスコミがマイナス金利政策を「重大な政策変更」と誤解している。非常に多くの外国人もそうだ。

    お化けは「出るぞ、出るぞ」と脅されているときが一番怖く、出てしまえば、「なんだ」と言うことになってしまう。それと同じだ。しかし、スカだからこそ日銀はできる。そして何も変わらない。

    世界各国の中央銀行は、政策金利の変更を通じて市中金利に影響を与えようとする。銀行間の貸借レートに変化を与え、貸出金利、企業への融資レート、FXのスワップポイントに反映させることを狙う。

    FED(米国の中央銀行)も同様だ。現在のFEDの政策金利5.25~5.5%は、銀行間の1日間の貸借レートそのものだ。だからこそ、FEDが政策金利を引き上げると市中金利(特に1日物金利)もそれと同じだけ上昇する。

    ■0.011%上昇では金融引き締めの効果はない

    ところが、日銀の金利政策である▲0.1%とは、銀行間の1日間の貸借レートそのものではない。

    3層に分かれている545兆円の日銀当座預金(市中銀行が日銀の預けてある当座預金)のうち、たった30兆円弱に付利されている金利のことである。いわば日銀に預け過ぎの部分に適用される一種のペナルティーに過ぎない。

    実際、11月2日の銀行間の1日間の貸借レートは▲0.011%だ。マイナス金利政策を解除しても、銀行間の1日間の貸借レートがたったの0.011%上昇するだけだ。「マイナス金利解除」と聞くと大イベントのように聞こえるが、実質的に何も起こらないのである。

    先日、日経新聞紙上で、前田栄治前日銀理事が「マイナス金利解除では変動金利型の住宅ローン金利は上がらない」と発言していたが、これがその理由。このニュースで為替が多少円高に振れてもすぐ円安基調に戻るだろう。

    ■日銀は、この歴史的な円安を止めることはできない

    今まで述べてきたように、日銀は出口の第一歩であるYCCの見直しはできない。撤廃もできない。マイナス金利政策の解除はできるが、金融引き締め効果はない。ゼロ金利政策の解除や、ばらまいたお金の回収など、もってのほかである。

    日銀はインフレが加速しても何もできないのだ。インフレに対処しようとすれば日銀が自滅してしまうからだ。円の暴落を恐れて、何もしなければ、円はとめどもなく下落を続ける。暴落よりはスピードが遅くなるが、と言うだけの話だ。

    さらには長期金利の上昇を抑えるため、お金を回収するどころか、今後もバラマキ続けなければならない(=国債買いオペを継続)。単年度の財政が黒字になるか、はたまた、よほどに長期金利が上昇し日銀以外の国債の買い手が現れない限り、保有国債の減少(=市中からのお金の回収=インフレの鎮静化)など夢のまた夢である。すでお金の回収に入っている他の中央銀行とは、どえらい違いだ。

    ■アメリカの景気が失速すれば、円高になるのか

    昨今の円安について、米国の景気が失速して日米金利差が縮小すれば円安は止まり、日銀は助かるのでは? と考える方もいるが、そんな悠長なことを言える時はとっくに過ぎてしまっている。

    米国がどうなろうと、日本がデフレや景気低迷が続かない限り、日銀はどこかで他国と同様に金利を引き上げなければならない。より重要なのは、バラマキ過ぎた円の回収を図らねばならないことだ。しかし、今の日銀にそれはできない。

    日米金利差が縮小しようがしまいが、日銀の財務は日ごとに悪化(=お金をバラマキ続けている)し続け、改善は全く不可能だ。ばらまいたお金を回収に入っている欧米の中央銀行と、バラマキを継続せざるをえない日銀の違いはどえらく大きい。金利差など小さな問題なのだ。

    ■金利上昇に耐えられない「脆弱な日本」に誰がした

    Bloombergの報道によると、著名投資家のドラッケン・ミラー氏は最近「米財務省が事実上のゼロ金利を利用して長期の国債発行を増やさなかったのは『史上最悪の失策』だ」と批判したそうだ。

    「金利が低い時に長期債で資金調達をすべき」はオーソドックスな金融論の教えるところであり、私もJPモルガン時代は、その原則にのっとってオペレーションをしていた。基本のキである。ドラッケン・ミラー氏は、もっと長い期間の長期債を低金利時代に発行すべきだったと米財務省を非難したのだ。

    対して日本である。日銀は、統合政府論の実践である「財政ファイナンス」(財政赤字を賄うために、政府の発行した国債等を中央銀行が通貨を増発して直接引き受けること)を事実上実践してきた。

    これは統合政府で考えると「せっかく政府が長期国債を発行したのに、日銀が、日銀当座預金という1日のお金に変換してしまった」ことを意味する。米財務省が「長期債の代わりに短期債を多く発行した」どころの話ではない。「長期債の代わりに1日間という極超短期のお金で資金調達をしている」状態を意味する。

    金利上昇に対して、とんでもないほど脆弱(ぜいじゃく)な国家を作り上げてしまったのだ。この状態を元に戻すのはもはや不可能もいいところである。

    ■海外のメディアも日銀のヤバさに気づき始めた

    最近、海外のマスコミも日本や日銀に厳しい目を向けるようになってきた。だんだん、日銀や円の厳しい実情が、海外にバレ始めてきたようである。

    Bloombergは11月2日、「円はトルコ・リラやアルゼンチン・ペソと同じ部類」というドイツ銀行の為替調査グローバルヘッド、ジョージ・サラベロス氏の主張を紹介した。

    このような記事が多くなり、多くの外国人が日銀や円の実態を知るようになれば、Xデイは間近に迫っている。米銀の日銀当座預金の閉鎖も可能性も一段と現実味を帯びてくるだろう。

    そうなれば円の紙くず化が近い。保険の意味でもドルを買っておいた方がいいという私の主張を理解していただけるのではないだろうか。

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    藤巻 健史(ふじまき・たけし)
    フジマキ・ジャパン代表取締役
    1950年東京生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。80年に行費留学にてMBAを取得(米ノースウエスタン大学大学院・ケロッグスクール)。85年米モルガン銀行入行。当時、東京市場唯一の外銀日本人支店長に就任。2000年に同行退行後。1999年より2012年まで一橋大学経済学部で、02年より09年まで早稲田大学大学院商学研究科で非常勤講師。日本金融学会所属。現在(株)フジマキ・ジャパン代表取締役。東洋学園大学理事。2013年から19年までは参議院議員を務めた。2020年11月、旭日中受賞受章。

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    金融政策決定会合後、記者会見する日本銀行の植田和男総裁=2023年10月31日、東京都中央区の同本店 - 写真=時事通信フォト


    (出典 news.nicovideo.jp)

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    日本経済を揺るがす?次期大統領が示す「ニッポン沈没」の懸念


    ージ・H・W・ブッシュ以来28年ぶりのことであり、戦後落選した現職の大統領トランプで4人目となる。 2021年1月6日のトランプ支持者による連邦議会襲撃事件をめぐり「反乱の扇動」を行ったとの批判が高まり、1月13日、トランプ大統領に対する2度目の弾劾の決議案が下院で可決されたが、2月13日、上院の…
    492キロバイト (63,676 語) - 2024年2月23日 (金) 22:56


    トランプ大統領の政策が続くと、日本にとっては経済的な負担がますます大きくなるようですね。今後の政府の対応が気になります。

     今年11月5日の本戦に向けて、各州で熾烈な予備選挙が繰り広げられている米国大統領選挙。3月5日には山場となる「スーパー・チューズデー」を控えているが、すでに米国内では、トランプ前大統領の復権が日に日に現実味を帯びているという。日本にも大きく影響を与え、お先真っ暗の未来が迫ってきそうだ。

     早稲田大学公共政策研究所招聘研究員で「日本人の知らないトランプ再選のシナリオ」(産学社)などを著書に持つ、政治アナリストの渡瀬裕哉氏が指摘する。

    「米国内で自動車や鉄鋼などの製造業が集まるラストベルト(さびた工業地帯)と呼ばれる地域は大統領選挙の激戦州でもあるのですが、現時点での世論調査では、ドナルド・トランプ(77)がジョー・バイデン(81)の支持率を上回っています。各州においてトランプ優勢の状況が続いている」

     国際ジャーナリストの山田敏弘氏もトランプ優勢に同調する。

    「ネットニュースでも『もしトラ(もしトランプが再選したら)』が注目のワードになっていますが、その気運よりも再選の可能性は高いと考えます。トランプが共和党の大統領候補に選ばれるのはほぼ間違いない。対するバイデンは11月の大統領選後に82歳となりますが、これまでも演説で支離滅裂な発言をするなど認知症疑惑が浮上し、健康面を不安視する声が上がっている。トランプも高齢ですが、私は『ほんトラ(本当にトランプが再選したら)』という視点で動向に注目しています」

     前回の選挙では敗北したが、今再び、米国全土で「トランプ待望論」が広がりを見せているのだ。先の渡瀬氏が解説する。

    「ワシントンD.C.に巣食うエリート集団たちに対する、米国民のアンチテーゼということです。ギャングや麻薬が入り込む治安の悪い地域もあり、切実な問題ですが、ワシントンD.C.の一部は『不法移民にも人権がある』みたいなことを言い出す。環境問題も同様で、生活が一向に上向かない国民にとっては『地球温暖化のためにシェールガスやシェールオイルの採掘をストップするよりも、すぐに再開してガソリン価格を下げてくれよ』が本音なんです。トランプは前回の大統領在任中、温暖化対策の国際的な枠組みを規定するパリ協定からの脱退を表明しましたからね。エリート政治家による国民の生活実感から乖離した政策への不満が、トランプ旋風を後押ししているのです」

     そうした追い風を背景に、米国の利益を最優先する「自国ファースト」を掲げるトランプ。大統領に返り咲くことになれば、世界秩序は大きく揺らぎ始めるだろう。

     山田氏もこの点を考慮して、

    「トランプは最近も、ウクライナに軍事支援を行うNATO(北大西洋条約機構)加盟国について『十分な軍事負担をしていない加盟国がロシアに攻撃されても守らない。むしろ攻撃するように促す』と発言。ご存じのとおり、NATOは1949年に米国や西洋諸国がソ連(当時)の脅威に対抗するために発足した軍事同盟ですが、今後のトランプの言動次第で、これまで取れていたバランスが一気に崩れる可能性があります」

     当然、同盟国の日本も余波をもろに受けることとなるだろう。トランプは、対中強硬政策を取ることが予想される。

    「すでに、中国からの輸入品について60%の関税を課すと明言していますが、今後、こうした貿易戦争が火種となり、米中の対立が激化すれば、台湾有事に発展することも否定できない。その場合、物資の補給や輸送など米軍の後方支援のために、日本の自衛隊が出動する事態も想定できます。前回の大統領任期中、トランプは日本政府に対して、年間20億ドルだった在日米軍駐留経費の日本負担分について、約4倍増となる80億ドル(当時の為替レートで約8700億円)を支払うよう要求している。今後、台湾周辺や南シナ海で米軍と中国軍による軍事衝突も起こりうる中、再び大幅な負担を求めてくることは十分に考えられます」(山田氏)

     莫大な負担金を要求された上に、自衛隊も戦地でフル稼働という理不尽な要求も飲まざるをえないのだろうか。

    アサ芸プラス


    (出典 news.nicovideo.jp)

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