能登半島地震発生後、岸田首相の原発に関する質問無視
“重大事態発生時の特例”地方自治法改正案 衆議院で審議入り | NHK - nhk.or.jp “重大事態発生時の特例”地方自治法改正案 衆議院で審議入り | NHK nhk.or.jp (出典:nhk.or.jp) |
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〈「テレビで総裁選の話をしている場合か!」能登半島地震後の岸田首相に批判殺到…国民が政府の災害対応に違和感を覚えるワケ〉から続く
災害対策や防衛費の強化、経済・農業政策など、私たちの暮らしに大きく関わる課題について、政府が中心となって日々対応している。しかし、その対応方法について、違和感を抱いている人も少なくないのでは?
ここでは、その違和感の裏側を徹底的に取材した国際ジャーナリスト・堤未果氏の著書『国民の違和感は9割正しい』(PHP新書)より一部を抜粋。政府の災害対策の裏側について紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)
◆◆◆
災害地震ショックドクトリン――危険な閣議決定はこっそりと2024年1月17日。
政府が月末に始まる国会に出す、ある法案の中身が公表されました。
その名も、「地方自治法改正案」。
政府が「緊急事態」と判断したら、「閣議決定」1つで、地方自治体から主権を奪い、速やかに国の指揮下に置くというルールです。
都道府県は、国の指示に従わなければならず、方針が決められる際には、必要資料なども出さなければなりません。
今回の地震で、〈初動が遅い〉〈ボランティアに来るなと県が過剰に拒否したことで、被災地に物資が十分届いていない〉〈知事の動きがとても悪い〉など、政府の対応に国民の不満とストレスが最高潮に高まったタイミングを見計らって、出てきたような法改正でした。
本当に緊急時のための法改正なのか「緊急時に、国の統制力をしっかり強め、行政の混乱を防ぐために改正しました」
知り合いの経営者にこの話をすると、彼はこういいました。
「政府の判断はやむないね。あんなに初動が遅いと、助かるものも助からないんだから。いまだに被災者が体育館に雑魚寝している映像を見ると気の毒でならない。維新にべったりのあの知事は、万博で頭がいっぱいだそうじゃないか。次また他の地域で地震が起きたら、国が指揮をとってすぐ対応できるようにしておくしかないだろう」
本当にそうでしょうか?
たしかに国連の報告書によると、日本は地震の規模、発生率ともに世界4位の災害大国です。
日本に住んでいる限り、能登の惨事は他人事ではありません。
でもここで、一旦立ち止まってみましょう。
災害のどさくさに便乗し、権力を中央に集中させる作戦では政府が急に〈法改正〉を言い出した時は、まず、今の法律がどうなっているかをチェックしてみて下さい。
案の定、〈災害対策基本法〉 第108条の3に、国は緊急事態の時、国民に協力を要求できる、とちゃんと書いてあるではないですか。
わざわざ今このタイミングで、「緊急事態に国からの指示に従う」ことを義務化する必要は、ありません。
なのにあえて、それをやる。
「違和感」のアラームが鳴りはじめます。
次に〈地方自治法〉の方を見てみると、第245条の2に、「法律がなければ、国または都道府県は自治体に関与できない」と書いてありますから、国と地方は、そもそも上下ではなく、対等な関係のはずですね。
「能登半島地震」のどさくさに便乗し、閣議決定1つだけで、地方自治体に政府のいうことを聞かせる法改正をするのは、一体何のためでしょう?
これはまさに、岸田総理の悲願である、「憲法改正」の中の「緊急事態条項」の地ならし、地方から外堀を埋めてゆく作戦に他なりません。
権力を中央に集中させ、憲法92条が定める地方自治の柱を根底から揺るがし、日本という国のあり方を変えてしまう危険な法改正です。
国民にとって重要な法律ほど、知らないうちに通されてしまうちなみに閣議決定というのは、内閣が「基本的な方針」を会議で決めるだけ、野党から反対意見が出るわけでもなく、とっても手軽で簡単です。
えっ、そんな重要なルール変更なら、なぜ誰も騒がないの?
答えは、国会審議をしていないからです。
そのせいで、中継もされず、話題にもならず、国民のほとんどが気がついていません。
思い出して下さい。
パンデミックやウクライナ紛争など衝撃的なニュースの陰で、いくつもの重要法案が静かに通過していたように、私たち国民にとって重要な法律ほど、知らないうちに通されてしまう、この国のパターンを。
ここまで読んで、あっ、と気がついた読者もいるでしょう。
地方自治法改正の中身が公表された日、テレビのコメンテーターもSNSも国民感情も、ある別なニュースにジャックされ、それどころではなかったことに。
「緊急事態条項」は一体誰の悲願だったのかパーティ券の売り上げをキックバックされた安倍派幹部議員7人が、不起訴にされたというビッグニュースに、国民は激怒していたからです。
ワイドショーは検察への批判コメントで盛り上がり、スポーツ紙の見出しもこれ一色。
さらにこの日に『週刊文春』が、『ダウンタウン松本人志の性加害スキャンダル』第3砲を公開しており、地方自治法改正など、ネットの話題にすらなりませんでした。
今国会で設置予定の「憲法改正条文案起草機関」で創設される「緊急事態条項」は、一体誰の悲願だったでしょうか?
1月30日に行なった通常国会の施政方針演説で、総理はしっかりと顔をあげ、自分の言葉で力強くこう訴えていたのです。
「自分の総裁任期中に、憲法改正を実現したい」
そしてその1か月後、改正地方自治法が閣議決定されたのでした。今後、緊急事態条項、そして憲法改正への道筋がどうつくられていくのか、注視していかなければなりません。
地震・雷・火事・オヤジ。それでも「原発」は安全です!?能登地震のニュースの後、海外の友人たちが次々にこう問い合わせてきました。
「ニュース見たよ、大丈夫!? 原発は?」
2011年3月11日の東日本大震災で、福島第一原発が人類史上最悪の事故を起こした日本で、地震が起きた! となれば、世界は真っ先にそこを心配するのです。
今回、震源地から65キロの場所で震度5強の揺れを受けたのは、今は止まっている志賀原発(石川県羽咋郡志賀町)でした。
北陸電力は、地震翌日に記者会見を開いてこう発表します。
「外部電源は一部使えませんが、安全上必要な機器の電源はちゃんと確保しています」
震度6弱以上の地震が起きると、原子力災害対策のガイドラインに沿って、原発は「警戒事態」扱い。
今回は震度7なので、原子力規制庁は原発周りを「警戒区域」に指定し、原子炉の「止める・冷やす・閉じ込める」機能や、使用済み核燃料の冷却状態をチェックするための〈原子力規制委員会・内閣府原子力事故合同警戒本部〉を設置したのでした。
そしてここでも発表は北陸電力と同じ、「原発は安全です」。
本当にそうでしょうか?
原子力規制委員会は一度立ち上げた対策本部をすぐに廃止こういう時は、「安全です」という結果発表だけでなく、そこに至る経緯もチェックしてみましょう。
すると案の定、あれ? と引っかかる箇所があったのです。
たしかに、原子力規制委員会はすぐに「警戒本部」を立ち上げたのですが、なぜかこの本部は、当日は5時間半経ってから、翌日は開いたけれど40分で終了、数日後には会議ごと廃止されていたのでした。
さらに、原子力規制委員会のホームページには、地震から24時間経っても「緊急情報」は何もなし。
3日経っても、3週間経っても更新されていなかったのです。
なぜ原子力規制委員会は、一度は立ち上げた対策本部をすぐに廃止して、監視をやめてしまったのでしょう?
総理の口からは原発のげの字も出ずもう1つ奇妙だったのは、世界が注目している原発について、岸田総理が数日経っても何も触れなかったことでした。
「総理、原発について質問させてください」
「地震から3日経過したのに、いまだに総理は原発についてコメントしていません」
1月4日の総理会見でも、原発のげの字も出てこないことに痺れを切らした記者の1人が、そう質問しました。
ところが、日頃から「聞く力」を自慢しているはずの我が総理は、なぜか一瞬にやりと笑い、何も聞こえなかったかのように、さっさと会場を出て行ってしまったのです。
政府発表を鵜呑みにできないワケ原発の問題について違和感を抱いていたのは、国内だけではありません。
韓国のYTNテレビは、原発についてこんなふうに取り上げました。
〈新年明け、能登半島西部にある志賀原発にて、人が立てないレベルの震度7が観測されました。
この時の衝撃で、志賀原発の変圧器の配管が損傷し、7日に原発排水溝周辺の海で横10メートル縦5メートルの油膜が発見され、続いてそれよりも60倍も広範囲の油膜が発見されました。
けれど電力会社も日本政府も、安全に問題はないと発表しています。
さらに冷却水の一部が溢れ出て、空気中の放射線量測定器は120個中18個が一時使用できなくなりましたが、これについても、電力会社と日本政府は、どちらも大きな問題はないとの立場を取り続けています。が、しかし、2011年の福島原発事故を思い出すと、この発表を鵜呑みにすることはできません……〉
その通り、鵜呑みにはできませんでした。
「安全です」という言葉を紋切り型に繰り返しながら、実は3メートルもの津波を最初「ない」と言ったり、漏れた油の量も実は5倍の量だったりと、後になるにつれ、その内容が悪化してゆく志賀原発の情報の出し方は、国民、特に被災した現地の住民たちにとっては、逆に不安にさせられるのでしょう。
結局、1月末になって、破損した外部電源の復旧に「半年」以上かかるほど、被害が深刻だったことがわかったのでした。
(堤 未果/Webオリジナル(外部転載))
(出典 news.nicovideo.jp)
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